北原白秋 お祭 五十音


「外郎売」以外で発声と活舌練習に使われる題材としては、北原白秋の「お祭」と「五十音」があります。

どちらも1人でできる訓練法ですが、「お祭」は2つのグループに分かれて、お互いが神輿を担いだ気になって元気良く大声で言い合うという、発声も兼ねた活舌練習に最適な素材です。

また、「五十音」は元来が詩なので、表現に気を付け、さらに発音がおろそかにならないよう正確に発音することに重点を置く練習に適しています。

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お祭   北原白秋


わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
祭だ 祭だ 背中に花笠 胸には腹掛(はらがけ)
向う鉢巻 そろいの半被(はっぴ)で
わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
神輿(みこし)だ 神輿だ 神輿のお練(ねり)だ
山椒(さんしょ)は粒でもピリッと辛いぞ
これでも勇みの 山王(さんの)の氏子(うじこ)だ わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
真赤だ 真赤だ 夕焼小焼だ
しっかり担いだ 明日も天気だ
そらもめ もめもめ わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
俺らの神輿だ 死んでも離すな
泣虫ゃすっとべ 差上(さしゃ)げて廻した
もめ もめ もめ もめ わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
廻すぞ 廻すぞ 金魚屋も逃げろ 鬼灯屋(ほおずきや)も逃げろ
ぶつかったって 知らぬぞ
そらどけ どけどけ わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
子供の祭だ 祭だ 祭だ
提灯つけろ 御神燈(ごしんと)あげろ
十五夜お月様 まんまるだ わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
あの声どこだ あの笛何だ
あっちも祭りだ こっちも祭だ
そらもめ もめもめ わっしょい わっしょい

わっしょい わっしょい わっしょい わっしょい
祭だ 祭だ 山王の祭だ 子供の祭だ
お月様紅いぞ 御神燈も赤いぞ
そらもめ もめもめ わっしょい わっしょい

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五十音   北原白秋


水馬(あめんぼ)赤いな、ア、イ、ウ、エ、オ。
浮藻(うきも)に小蝦(こえび)もおよいでる。

柿の木、栗の木、カ、キ、ク、ケ、コ。
啄木鳥(きつつき)こつこつ、枯(かれ)けやき。

大角豆(ささげ)に酸(す)をかけ、サ、シ、ス、セ、ソ。
その魚(うお)浅瀬で刺しました。

立ちましょ、喇叭(らっぱ)で、タ、チ、ツ、テ、ト。
トテトテタッタと飛び立った。

蛞蝓(なめくじ)のろのろ、ナ、ニ、ヌ、ネ、ノ。
納戸(なんど)にぬめって、なにねばる。

鳩ぽっぽ、ほろほろ、ハ、ヒ、フ、ヘ、ホ。
日向のお部屋にゃ笛を吹く。

蝸牛(まいまい)、螺子巻(ねじまき)、マ、ミ、ム、メ、モ。
梅の実落ちても見もしまい。

焼栗、ゆで栗、ヤ、イ、ユ、エ、ヨ。
山田に灯のつく宵の家。

雷鳥(らいちょう)は寒かろ、ラ、リ、ル、レ、ロ。
蓮華が咲いたら瑠璃(るり)の鳥。

わい、わい、わっしょい。ワ、ヰ、ウ、ヱ、ヲ。
植木屋、井戸換え、お祭りだ。