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映画「ねじ式」見学日記 1「ねじ式」見学日記 序 97/11/08 09:12つげ義春原作の漫画「ねじ式」をご存じですか? 1968年に「ガロ」に発表され、漫画界のみならず社会的にも反響を巻き起こした作品です。その「ねじ式」を含むつげ義春の漫画「別離」「もっきり屋の少女」「やなぎや主人」の4作品からなる映画「ねじ式」が目下制作中なのです。監督は、高倉健主演の「網走番外地」シリーズ他、数多くの作品を世に送り出してきた巨匠、石井輝男。主演は「バタアシ金魚」でデビュー以来、独特のキャラクターと存在感で、現在多くの映画ファンを魅了している若手個性派俳優、浅野忠信。共演者には藤谷美紀、金山一彦、藤森夕子、丹波哲郎、清川虹子、他。 公開が来年のGW、BOX東中野、他で予定されている、この「ねじ式」の撮影見学日記を、全てではありませんがご紹介することになりました。 私のつたない文章ではありますが、よろしかったら読んでみてください。 事の起こりは10月19日(日)だった。四ツ谷三丁目のイメージフォーラム(その後、渋谷に移転)で催された中西義久さんの上映会に行った時のことだ。久し振りに松戸次郎さんと会い、自然と食事&飲みに行く事になった。たわいもない話をしている時に、ふと演技の話になり、声の演技しか経験がなく、自分の演技に限界を感じていた私は、酔った勢いか「実写の撮影を見たい」という言葉が口から出た。すると松戸さんの口から「シスオペの茶谷さんが『ねじ式』のスタッフをしているから見学できるかも。よかったら聞いてみようか」という答えが……。調子に乗った私が松戸さんにお願いをしたのは言うまでもない……。 数日後、松戸さんから「ねじ式スタッフルーム」の電話番号を聞き、茶谷さんと直接話す。なんと「フォーラムに見学日記を書いてくれたら撮影を見学させてくれる」と言うではないか! 二つ返事で引き受け、このような次第になったのである。 かくして、後日、撮影日程や地図がFAXで送られてくるのを待つだけになった。 そして迎えた11月1日(土)。夜7時過ぎに電話のベルが。受話器を取るとFAXの音が……。送られてきたのは総数19枚にも及ぶ、約束のものだった。 表紙には「本当、無事クランクINっす!」という、茶谷さんの喜びや安堵にも見える文字が書かれていた。 FAXを一通り読み終え、茶谷さんと連絡を取り、気になるところをチェック! 制作のIさんか若い人に「茶谷のフォーラム の者ですが、見学に来ました」 と話せば大丈夫という一言を貰い、一安心する。11月1日は東映撮影所20ステージでの撮影。進行表を見ると「ねじ式」に相当するシーンの撮影らしい。2日はお休みで、3日〜4日は五日市での撮影。「もっきり屋の少女」「やなぎや主人」に関係するシーンらしい。5日は平井で 「ねじ式」「別離」「やなぎや主人」の撮影のようだ。しかし、11月の2日〜5日は仕事&個人的事情で撮影に行けない。もっきり屋の建物を見たいがため五日市まで行きたいが、こればかりはどうしようもない。そこで、6日の平井での撮影から見学することにした。(つづく) 「ねじ式」見学日記 1 97/11/09 12:27 11月6日(木)。平井での撮影2日目であり最終日。進行表によると、8時30分から平井駅南口側の食堂 「福住」近くで撮影開始らしい。6時に起き、7時20分に家を出る。電車のラッシュというものに遭遇したことがない私は、 ちょっとドキドキ。これでラッシュの乗客の役が来ても大丈夫! と思いきや、たいしたラッシュではなかった……。山手線、総武線に乗り継いでも、噂ほど混んではいなかった。私の期待が大きすぎたのか、ちょっと拍子抜けだ。 8時30分、無事、時間通りに平井駅に到着し、撮影隊と合流。Iさんを尋ねると、10時過ぎになるとのこと。そこで、尋ねた若い人に茶谷さんから言われたことを話すと、「え!?……いや、聞いてないですけど」の答え。一瞬、冷たいものが背中を走るが「でも、そうですか、どうぞ」という言葉を耳にし、ちょっと安心。名刺を渡し「邪魔にならない所はどこですか?」と見学を開始する。 制作スタッフは、既に撮影するためのセット作りに励んでいた。台本がないので間違っているかもしれないが、「ねじ式」でメメクラゲに左腕を噛まれたツベが、医者を探すくだりだ。眼医者の看板があちこちに掲げてある。技術スタッフは照明&カメラの準備をし、その中に石井監督の姿もあった。スタッフを観察していると、映画専門学校の生徒さん8名と引率の先生が現れた。先生は石井監督と親しいらしく、話に花が咲いている。どうやら私と同じく見学に来たようだ。 そうこうしている内に準備が出来たらしく、9時15分頃撮影開始。助監督が役者の代わりにカメラ&照明のアタリを取るための演技をしている。「これがスタンドインかぁ」と一人感心する。そして主人公ツベを演じる役者(浅野忠信)が呼ばれ、テストを数回。待ちの間、上半身裸の役者さんにはジャンパーがかけられる。 「本番用意、スタート!」監督の声が響く。結構迫力があり「さすがベテラン」と、またもや感心する。フラフラ歩きながら医者を探すというシーンのせいか、すぐにOKとなった。 そのシーンの撮影が終わると、スタッフは撤収作業に移った。この間にすかさず石井監督に挨拶をする。「茶谷君の、そう」と明るく言ってくださり、助監督を紹介してくれた。明るくて優しい、とても良い人で、一目で好きになってしまった。茶谷さんからいただいたプロフィールによると1924年生まれとあるが、とてもそんな歳には見えない。服装も若いし動きも機敏だ。 次は、木本&ツベの部屋での撮影だ。4作品中「別離」だけ読んでいないため、消去法により恐らく「別離」だと思われる。照明の準備にずいぶん時間がかかっている。準備にこれだけの時間がかかるとは、一日に1シーンしか撮れないことがあるというのも、あながち嘘ではなさそう だ。この間に専門学校生達が帰って行った。 10時30分頃、紙芝居のおじいさん役の方がみえる。 10時45分頃、いよいよ撮影再開。ツベ、国子役の役者(藤谷美紀)とセパード役の役者(広崎哲也)が登場。食堂「福住」 の2階での撮影だ。中が狭いため、外からの見学になる。中の様子が全然わからず、時折り声が聞こえるくらい。ちょっと退屈。その時、茶谷さんから聞いていたIさんを発見。挨拶をするが、Iさんも聞いていないと言う。茶谷さん、どうなってんの? 12時。丁度撮影が一段落し、お昼休みに。再開は12時30分からとのこと。近くの食堂でお昼を済ませるが、なかなか料理が来ず、10分遅れで戻る。しかし、撮影再開には間に合った。暇なので辺りを見回すと、駅が近いこともあり、結構通行人が多い。抜け道として使われているようだ。撮影器材が「邪魔だ!」と怒鳴った自転車に乗った変なおじさんもいた。映画作りに協力して欲しいと思う反面、確かにあの狭い路地の場合、いつもの場所をいつものように通るおじさんには危険だったかもしれない。 16時。陽が暮れるとマズイため、やっと紙芝居のおじいさんの出番。5時間30分も待たされたことになる。役者ではないおじいさんは相当退屈だったようで、同じように暇を持て余している私に、ずいぶん声をかけてくれた。おじいさん、面白い話や姓名判断、水飴&中国のお菓子を ありがとう! 紙芝居のシーンでは数名の子役もいたが、一体いつ来たのだろう? おじいさんと一緒の撮影なのだから、やはり5時間30分も待ったのだろう か……? 陽が落ちてきて17時30分になった。18時から仕事の打ち合わせがあるため監督とスタッフの一部に挨拶をして、撮影現場を後にした。スタッフはこの後、食事休憩をし、近くの路地と公園で1シーンずつの撮影のはずだ。 撮影の場所となった平井駅南口は再開発計画のため、11月中旬には建物が取り壊されるようだ。ほとんどが空き家になっているが、まだ住んでいる人もいるらしい。この町の最後の姿を「ねじ式」が納めているのかもしれない……と思うと、なにやら感慨深い気がした。 見学の一番の目的は、役者の演技&監督の演出などだったのだが、今日の所は仕方がない。しかし、いろいろな意味で自分の仕事にプラスになることを随分学ぶことができた。茶谷さん、ありがとう!(つづく) 「ねじ式」見学日記 2 97/11/10 07:06
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