異国に嫁いでいたドルンチナが、突然故郷に帰ってきた。連れ戻しに来た兄から兄弟たちの戦死を知 り、共に帰郷したのだという。だが、その兄は３年前に戦死していた……。兄とは何者？　本当に死者の復活があったのか？　中世アルバニアを舞台に、アルバ ニア人の宗教と民族意識を描くミステリー仕立ての伝奇ロマン。初回放送　平成12年8月19日

　20世紀初頭のサラエボ。没落した大商人オブレンは、娘のライカに「あらゆる思いやりを捨て、世間 の人を見返してくれ」と遺言を残し、死ぬ。第１次大戦を機に金貸しとなったライカは非情な守銭奴となり軍部に取り入るが、そこで彼女を待っていたの は……。ノーベル文学賞作家の代表作をオーディオドラマ化。初回放送　平成12年8月12日

　１９９３年、旧ユーゴスラビア内戦の最中、９２歳で死んだ女性テーナと家族の物語。２０世紀初頭の ハプスブルグ家統治時代から第一次世界大戦、ナチスの侵略、社会主義国家ユーゴスラビアの誕生と崩壊にいたるまで、変転を繰り返した国家体制……。その歴 史の荒波をものともせず、クロアチアの大地に根ざしてしたたかに生き抜いた女性の生涯を、孫娘の視点で描く。初回放送　平成12年8月5日

　リストラに遇い、妻とも別れた安田則夫（45）が選んだ職業は登録制の介護ヘルパー。そんな安田が 担当することになったのは木村カネ（80）。同居している息子夫婦とも不仲で、時折自殺未遂騒動を起こすという。桜の散った公園を安田と散歩していたカネ がふとつぶやく。「私が以前住んでいた家の近くの山の中腹の公園ならまだ咲いている」。２人は契約時間を過ぎてもなお、電車を乗り継ぎ、その公園へ向う が……。介護を通じてお互いを理解し合う男と老婆の心の交流を、関西の一地方都市を舞台に描く。

　佐和子（17）の父・基樹（49）が癌に侵され、既に昏睡状態に陥っている。病院で母・道代 （44）と看病の日々。そこへ律子（36）という女性がカサブランカの花束を持って見舞いに現れた。律子は在阪の現役新聞記者で、基樹が大阪に単身赴任し てきた時、愛し合っていたのだという。律子を拒絶する佐和子と母。しかし、執拗に律子は見舞いに来るのだった……。放作協創作ラジオドラマ脚本懸賞募集の 佳作入賞脚本をドラマ化。

　戦前の北千島では、多くの女性達がカンズメ工場で働いていた。その苛酷な労働と望郷の想いを謳い上 げた唄が「北千島女工節」である。この歌をモチーフに、雄大で男気溢れた痛快な物語を描く。
　昭和15年（1940年）、石川栄一（25）は、美声を買われ漁の音頭を取る波声船頭として、友人八幡豊 （24）と共に北千島の幌筵（ほろむしろ）島に向う。そこで八幡は、許婚の房江と再会。房江の借金を返すため、２人は真冬の海で過酷な仕事に就くが、海賊 と遭遇する。

　健一（38）は順風満帆な人生を歩んできたが、ここにきてそれが大きく崩れ始めた。任された企画が 頓挫し、妻は家を出て行った。すべて健一が他人を信頼していないからだと妻は言う。そんな時に一通の手紙が届いた。健一が７歳の時、祖母の家で半年一緒に 暮した良雄が癌に冒されており、死の前に一目だけでも会いたいという手紙だった……。

　恋人だった女性の妹と結婚した中年男。彼ら夫婦は海に臨む部屋に住んでいる。夜、水平線の彼方に明 滅する灯火が見える。その火が灯っている間に願い事をすれば、願いが叶うという。暴風雨の一夜の二人の日常会話から、心に秘めた二人の願いがあぶりだされ ていく……。
　岸田戯曲賞受賞の劇作家・松田正隆が描く夫婦二人だけの密室劇。初回放送Ｈ11.3/13

　卒業シーズンの３月。繁華街に近い交番では、トラブルの処理に大忙し。その夜も泥酔した中年男が連 れられてきた。男は今日大学を卒業した娘が迎えに来れば家に帰るというが、迎えに来たのは息子であった。そして息子は、うちにはもう娘はいないと警官に告 げる。だが、なおも男は娘を連れてこいと言う。それには理由があり……。劇団おばけおばけ主宰の劇作家・土屋理敬が描く、ソフトな社会派ドラマ。

　ネオンきらめく繁華街。その場末の雑居ビルにかかる「旅師・小島屋」の看板。実は無免許の「旅行代 理店」なのである。小島はかつて大手旅行代理店に務めていたのだが、老夫婦が希望した「自殺旅行」を受注した事が発覚しクビになったのだ。そして、彼は旅 師を始めた。ここに来るのは様々な事情を持った夫婦や家族……。彼らの人生をのぞき見て小島が思うことは……。劇団・道学先生の座付作家・中島淳彦が描く 人生のアイロニーの物語。

　倉田大蔵（60）は２人の子供を育て上げ、長崎県松浦で妻と２人で暮している。長崎おくんちの日、 上京したものの大学を中退し、演劇の道に進んでいる長男から金の無心がくる。妻は長男とは縁を切り、素直で大人しい次男に期待をかけようというのだ が……。九州松浦の方言を駆使して、常に時代と対峙してきた劇作家・岡部耕大が、６０年代末の父親と息子の葛藤を通して、現代の父権と家族の意味を問う。

　泰司（13）は重度の障害を負っている。彼の父は、泰司のことで自責の念にかられるが、なすすべも なく酒に溺れ、新興宗教に入信する。そこへ泰司の世話係としてフジコ（15）が養女としてもらわれてくる。彼女は自分の運命を呪うが、次第に泰司に親近感 を覚える。一方、母は保険の外交員になり、一家の家計を支え始めるのだが……。劇団・大人計画の気鋭の劇作家・松尾スズキが、暖かくも残酷な「家族の肖 像」を描いていく。

　失業中の純一（40）は酒を飲むと暴力衝動を押さえられず、自己嫌悪に陥っていた。そんなある日、 中学時代の友人・和弘と25年振りに偶然再会した。転校していったため和弘が行けなかった修学旅行を２人でやりなおそうと九州へ出掛けるのだが……。

　高松市内の繁華街の路上で、仲間の好治と秀一郎と共にブルースを演奏する泰平。が、病気の母を置い て、高松を出る決心がつかなかった。そんな時、曲が良くても流行でないブルースは要らないとレコード会社から告げられ、３人の間に未来への方向の違いが出 てくる。そして、母の死去……。１人になり、自分の音楽と向き合った泰平は、真のブルースとは各地で生きている人間とふれあい、喜び、悲しみ、それを歌い 続けることである。そしていつかこの讃岐のストリートをゴールとするのだと決心し、ひとり静かに瀬戸大橋を渡った。

　ポルノ雑誌で漫画を描いている私（24）は、夫（34）と二人で東京の喧騒を離れ、外房の海の見え る家に引っ越してきた。夫は、以前編集者だったが、こちらに来てからはＪＡの臨時職員になった。二人はいつの頃からか、無気力で否定的に日々を過ごしてい るが、別れるつもりもない。そんな折、ソーラシステムの営業マンが突如訪ねてくる。父を知らずに育った私は、彼に父親の暖かさを感じ、少しずつ心を開いて いく……。第２４回仙台局オーディオドラマ脚本募集　佳作。

　内気で友達とのコミュニケーションがとれずに東京の高校を中退したサチは、偶然見た職員募集広告か ら日本最北の旭山動物園で働くようになる。初めて体験する北海道の冬に、サチは何度も挫けそうになる。この厳しい環境の中で南の国の動物達は慣れない寒さ と戦っていた。それはまるで、生きる事に悩むサチを励ますかのようだった。周りの人々に支えられながら、動物達と遅い春を迎えた時、サチ自身にも大きな変 化が現れているのだった。

　失業し主夫をしている私を悩ますのは、わがまま盛りの５歳の娘。失業の負い目と焦りも手伝い、かみ 合わない娘とのコミュニケーションにいらいらが高じ、思わず手を挙げた事から、娘は唸って物を噛むという奇行を繰り返し始めた。私は娘に対し殺意さえ抱い ていることに気が付き愕然とするが、ある日ふとしたことから小さいが確実な娘の成長を知って、娘への愛情を取り戻しかける。
　人生におけるささやかだが確かな変化を描いた秀作。第２１回ＢＫラジオドラマ脚本懸賞入選作。

　成宮俊介（53）は、社内で徹底的な業績主義で出世し、故郷の広島支店長として赴任した。支店では 高校時代、同じ野球部にいた同期の阿部紀夫（52）が俊介を出迎えた。俊介は阿部に苦い思い出があり、嫌悪していたが、俊介の娘・啓子（29）と阿部の息 子・直樹（30）がそれぞれの親を知らずに相思相愛の仲となり、プロポーズ。家庭を顧みなかった俊介が娘のためにいやいやながらもひと肌脱ぐことを決意す るが……。

　永井荷風こと永井壮吉。文豪・永井荷風と本名が同じということで「断腸亭」と呼ばれるこの放浪の男 が、お仲間の与謝野昌子・佐伯祐二とやってきたのは、古いさびれた温泉町。そこで谷崎潤一郎によく似た男・鰐田潤一郎と出会い、彼が主催する文学サークル へ誘われた。この鰐田、元町議会議長であり、次の選挙で返り咲きを狙っているという。なにやらきな臭い＜陰謀＞に巻き込まれそうな荷風一行だったのだ が……。

　雑誌編集者・佐藤（38）は、盗聴についての特集企画の取材を進めていた。そんな折、妻・珠美 （33）の不審な挙動が、佐藤に疑念を抱かせる。そこで思わず、佐藤は取材先で貰ってきたサンプルの盗聴器を自宅に仕掛けてしまう。妻の不実を知り、愕然 とする佐藤。しかも、相手は行動を共にしている会社の後輩だった。佐藤は、不信に喘ぎながらも自分の弱さを乗り越えようとするが……。

　軽薄なミステリーで知られる作家・桂木孝介（56）は、入浴中に倒れ幽界を彷徨う。目覚めるとそこ は集中治療室であり、下半身麻痺を宣告された。その時から彼は、現世と幽界を彷徨い始める。孝介は幽界で自分の作品の登場人物たちと出会い、新たな作品を 書こうとするのだが……。病に倒れた人間が死の淵から生還し、障害者として新たな人生へ再出発していくまでの姿を、尊厳とユーモアを交えて描く。

　大野孝之（40）は、ゴーストライター。彼のもとにＡＶ女優から自伝の依頼がくる。取材を重ねるう ちに「彼女は自分の娘かも……」と思った大野の前から、彼女は突然、姿を消す。彼女は幽霊だったのだ！　夢に現れた彼女は、「書き終えた原稿を母に渡して 欲しい」と頼んでくるが……。

　野田康祐（70）は、自分の仕事に誇りを持っている腕の良い大工だった。そして、彼は今でも心に傷 を背負っていた……。郵便配達夫の青年との出会いや親友の妻との再会を通して、再び生涯現役の大工として働こうと決意するまでを、過疎の進んだ山村を舞台 に描く。

　夏子（33）は夫と娘の３人家族。隣り町に住む父は、若い頃いろいろと事業に手を出しては失敗の連 続。女性関係は派手で、家族には暴力をふるう専制的な親だった。そのため夏子は、将来こんな男とだけは結婚したくないと思っていた。しかし、最近の夫の言 動には、父と共通したものを感じるのだった……。

　特別養護老人ホームの新人寮母・美佳と、ホーム内の人々とのふれあいを描いた最優秀賞受賞作『彼方 の時間割』。シルバービジネスを新規に始める人々を暖かく見つめる優秀賞受賞作『入れ歯にやさしいレストラン「ルンビニ」が開店しました』。この２作品を ドラマ化して、併せて放送。第13回銀の雫文芸賞入賞作２作品。

　騎手を夢見るカケル（16）。が、急激な体の成長で騎手に不向きになっていく自分に悩み、その不安 から家出し、大好きな名馬サツマレインボーの牧場を訪ねる。そこで、落馬事故で騎手引退を余儀なくされた調教師・玉見と出会った。
　二人の心のふれあいを通して、少年にとっての夢とは何かを問う。

　リストラされた恨みを晴らすべく、上司の家に向った木村。だが、いざとなると怖気づいてしまい、そ んな自分にも絶望した木村は、川へ包丁を投げ捨てた。途端、川の中から若い女が現れ……。
　童話を背景に不思議な出会いを通して、男が人生の再出発への意欲を抱くまでを紡いでいく。

　難病・腎ネフローゼと闘い、「名人」の夢に向いながら29年の生涯を閉じた棋士・村山聖。怪童と恐 れられたこの勝負師を支えてきたのは、家族や奨励会の仲間、そして師匠・森信雄であった。病と闘い続けながらも常にユーモアを忘れなかった聖の力強い将棋 人生を描く。

　健二はごく普通の中学生。日々の生活は見事に単調でパターン化された退屈なものだった。だがある 日、彼は母親が実はロボットである事を発見する。しかも、徐々に彼の周りの人々の中にロボットがまぎれ込み始めていたのだ。本当の母親を探し回る健二が目 にした真実とは……？

　昭和60年、千歳空港の拡張工事で縄文時代の「人が歩いた道」の遺跡が偶然発見された。この遺跡発 掘を背景に、子を亡くして別れた夫婦が新たな結びつきを持つまでを、登場人物が奏でるヴァイオリンの音色とともに爽やかに描く。平成１１年度札幌局オー ディオドラマ脚本募集佳作脚本。

　時は日中戦まっただ中の満州。拡大する戦線の陰にひとつのダメ部隊があった。大阪出身のちょっとお まぬけな兵隊さんたち。突撃の訓練に明け暮れるはずが、何を間違ったのか彼らが始めたのは漫才の訓練だった!?　果たして彼らは立派に突撃できるのだろう か？

　北国のある町にひっそりと佇むりんご堂古書店。母のケガを機に店を任された澄雄だが、息子との時間 を過ごすため、日曜だけの店番を募集した。応募してきたのは老人、永井壮吉。文豪永井荷風の本名と同じである。彼が現われてから、りんご堂はいつしか文 豪・俳人などと同名の人々の溜まり場となり、にぎわうようになる。そんなある日、荷風氏は澄雄に自分の日記を出版しないかと持ちかけた……。第28回創作 ラジオドラマ脚本懸賞募集佳作脚本。

　３年前、最愛の父を亡くし、同時に失恋も経験した主人公・尚子が、妻の看病で疲れ切っている上司・ 高木と会社の唯一の喫煙所である非常階段を舞台に心を通わせ癒されていく姿を、抑えたトーンで描いていく。ギャラクシー賞受賞記念アンコール。初回放送　 H11.6/12

　川沿いのマンションの一室。ある日を境に、その部屋から電気が消えた。同じ時、河を挟んだ向かい側 のアパートの一室から一人の主婦が失踪。そして誰もいないはずのマンションの一室からアパートを覗き見る一人の女性。彼女は一体誰なのか…？　存在の不可 思議さをサスペンスタッチで描いていく。平成11年度CK創作ラジオドラマ脚本募集・佳作受賞脚本。

　GWの初日、定期バスに乗り合せた５組の人々。彼らはそれぞれに悩みを抱えていた。子供に煙たがら れている老婆、義母に内緒で不妊治療に赴く夫婦、父母の離婚を危惧する少年etc…。徳島から大阪までのバスの旅の間に、彼らはそれぞれが自分の問題と向 き合い、解決や前進へといたる旅をする姿を描く。

　場末の宿屋で働く下男ジョセフにかけられた盗みの嫌疑。しかし、殴られ、足蹴にされても黙して一切 弁明をしない。やがて、疑いが晴れ、大きな声で慟哭するジョセフだが、決して自分のために哭いているのではない。その声はすべての人の心を大きく揺さぶっ た…。映画監督でもあるジャヤカーンタンのベストセラーをドラマ化。初回放送H11.9/4

　旧世代への弾劾や不信の中で、共感やヒューマニティを求める新世代のスポークスマンといわれるモー ハン・ラーケシュの印パ独立以来の状況を扱った短篇をオムニバスで構成。憎悪の収斂に数百年かかるといわれる印パ関係を背景に、腐敗した役人、貧困に苦し み怒る庶民を描く。初回放送H11.8/28

　背景は、ベンガル地方を襲った人為的な大飢饉。美食や遊興に浸りながら悲惨な飢饉を報告する外国領 事館員、オムレツを食べながら飢饉のニュースに胸を痛めるブルジョワ、飢えの為都会に出て来たが結局は餓死してしまう辻音楽師の告白。以上の三人をコラー ジュして不条理な人間の営みを告発。初回放送H11.8/21

　かつては大地主だったラエ家も、今は没落し、新興の家に取って変わられようとしている。かなたから 聞こえてくる宴も、時代の変遷を感じさせる。そんなある日、美しい舞姫がラエ家を訪れる。久しぶりにジョルシャゴル（音楽堂）に明かりが灯り、最後の宴が 始まる。インドﾞ版『斜陽』。初回放送H11.8/14

　人生に失敗した中年の男たちが、安らぎを求めて川原に集い、小屋を作った。少年の頃のように心踊る この「秘密基地」の日々の中で、自らの『傷』に向き直り、立ち直っていく男たちの姿を、父の面影を探す少女の純粋なまなざしを通して、生き生きと描いてい く。

　放作協入選作　※00/03/03最終選考会にて決定された。

　無職で漫然と過ごす伸一（29）は、美保（28）と同棲中。そんな彼のもとから美保は突然去ってし まう。伸一は大家である孤独な老婆にいつしか共感し…。
　コミュニケーション不全な現代、一人の若者が心の闇の出口を見つけ出す過程を描く。老親介護のテーマを象 徴的な手法で描いていく。

　ひたすら穴を掘り続ける２組の夫婦。一組は《何か》を掘り起こそうと、一組は《何か》を埋めようと している。《何か》――それは老親を介護した歳月の“思い出”だった…。老親介護のテーマを象徴的な手法で描いていく。

　失語症の患者治療に携わる「聴覚言語士」に成り立てのカオル。人のぬくもりを求めながらも、彼女は 人と深く接することができない。悩むカオルの前に小動物好きの青年が現われるのだが…。孤独な２人の出会いを通して、支えあって生きていく事の大切さを描 いていく。

　60歳で喉頭癌のため声を失い、以後、己の生と死を見つめた小説を書き続けた石和鷹。壮絶な闘病生 活を通して、近づいてくる死を意識しながら、生の証を克明に記した彼がついには死をも許容できる『人間の底知れぬしたたかさ』を体得していくまでを描いて いく。
　平成11年度文化庁芸術祭・優秀賞受賞記念アンコール　H１１・４・１０初回放送

　ライフワークである戯曲『私の下町』シリーズなどを通じ、一貫して「時代」にこだわり続けてきた福 田善之氏が、自らの青春の最も輝いた１９５０年代後半をモチーフに、＜現実＞と＜幻想＞の間を往還しながら自らの人生の「物語」を再び見つけ直そうと格闘 する老人の精神の軌跡を描く。

　社会問題など硬派なテーマの戯曲を数多く発表している気鋭の劇作家・平石耕一氏の初オーディオドラ マ脚本作品。地方の山村にふりかかったダム建設計画に絡む政・官・民の人々の行動を活写しつつ、日本の行政システムをあぶり出し、住民の「環境問題」意識 が目覚めていくまでを描く。

　上司を殴り倒し、会社を飛び出し海を見に行こうと車を運転していた桜木は、くせのある人物たちを次 々にヒッチハイクで乗せ、あげくにカージャックされる。そして車はそのまま海へ転落してしまう。ところが助けられ、取り調べを受けたのは桜木一人だけだっ た…。多重人格の男が繰り広げる事件の顛末を、臨場感あふれるダミーヘッド方式で物語る。

　北海道支社への異動が決まった転勤族の裕史は、急遽、彼女にプロポーズをすることに。だが彼女の父 は、２人が付き合っていることすら知らない。裕史は、熱狂的ドラゴンズファンの父親に、試合中の野球場で結婚の許しをもらわなければならないはめになって しまう…。
　世代の違う男２人が、様々なハプニングを経て、互いの結婚観をぶつけ合う姿を描く。

　恋人に裏切られたOL・淳（34）は人生の転機と初めての海外旅行に出るが、旅行会社の手違いで見 ず知らずの男・和美とふたりっきりの旅になってしまう。しかも、和美の行動は謎めいていて、最悪の気分の淳だったが、異国の地を巡って行くうちに、次第に 二人の距離は縮まって行く。そして訪れたフランスで和美は突然謎の単独行動をとる。その裏には和美の過去の秘密があったのだ…。

　運の悪さから、会社をクビ、家族にも去られ、多額のローンだけが残った江坂は、ひょんな事から少女 の狂言誘拐の一員となり、偽装家族を演じる事となる。身代金の分け前という目的でひとつになる構成員。だが、身代金を手に入れる瞬間、少女が本当に誘拐さ れてしまったのだ…。リストラされたさえない中年男と箱庭のような乾いた家庭から逃げ出そうとする少女が織り成すホームコメディ。

　鈴木は（44）は妻・七海（39）とガングロ・茶髪の娘・美穂（15）との３人家族。ある日、会社 からリストラの通告を受けた鈴木は1000万円を超える預金が入っているはずの通帳に10万円の残高しかないことを知り、がく然とする。なんと七海がホス トに貢いでいたのだ。妻の浮気にショックを受けながらも「絆」をとり戻すために家族3人でテーブルにつくが…。

　医療ミスから記憶を蓄積できないウェルニッケ脳症を発症した橋本は、溶けて消える雪のように新しい 記憶を失って行った。自分の存在を確認出来ない彼のために妻は消えゆく二人の時間をノートに記していく。そんなある日、楽団のコンサートを大成功に導いた 橋本は、たとえ自分の中に記憶は残らなくとも、一緒に過ごした人の心に思い出を残す生き方もあると希望を見出していく。

　人生の目的が見つからず大学を中退してしまった青年・真生はオートバイで四国八十八ヶ所の旅をして いる。そして徳島のある町で「空海」と名乗る不浪者風の不思議な老人と出会う。不老不死で1200年生き続けてきた空海老人との出会いを通して青年の心が 癒されていくまでを描く。

　放送局に勤める吉村は、不本意な異動を命じられ投げ やりな日々を送っていた。ある日ジャイアント馬場の死を知り、自分が子供時代に録音したテープの存在を思い出す。そのテープにはジャイアント馬場の全盛期 の試合の音が応援する自分の声とともに記録されていた。そのことをきっかけに『音』に対して興味を持ちはじめた吉村は、やがて自らの家庭が崩壊しつつある ことに気づく。にぎやかだったはずの家庭に、いつのまにか家族の音がなくなっていたのだ。その原因は吉村自身にあった……。